「これ以上はしねぇからそんな顔すんな」

「……っ、」


戸惑うあたしの前髪をそっと掻き上げ、額に唇を落とす十夜。


「この抗争が終わるまでは……いや、お前に全部話すまでは何もしない」


抗争が終わるまでは?

全部話すまでって、それ、裏を返せば……。


十夜の言葉を理解するや否や、ボンッと急上昇する顔の熱。


「子供、11人産んでくれるんだろ?」


「……へ?11人?」


意地悪な笑みを浮かべながらそう言った十夜にぱちくりと目を瞬かせる。


「野球チームが作れるぐらいってお前言っただろうが」


「………」


いや、うん。言った。言ったけど。


確かに野球チーム作れるぐらいいっぱい子供産んであげるからねって恥ずかしいプロポーズしたけど!


「……十夜、野球チームは9人だよ?」


うん。間違いない。野球チームは9人だ。


11人って確かサッカーの人数だよね?


「………」

「と、十夜?」


甘い空気とは売って変わって室内に漂うのは気まずい空気。


い、言わない方が良かったのかな?


固まってしまった十夜を見て少しだけ後悔。


声を掛けようと十夜の顔を覗き込めば、十夜はその視線から逃がれる様にあたしの上から退いた。


そして、左横にゴロンと転がり、フイッと背を向ける。


こ、これはもしかして……。


「……十夜、照れてる?」


ポツリ、そう問い掛けてみれば、その言葉に次第に赤らんでいった十夜の右耳。


か、可愛い……!


「……笑うな」


吹き出したあたしに十夜の拗ねた声が聞こえてきて、それにまたクスクスと笑うあたし。


笑わないなんて無理だよ。だって十夜可愛すぎるんだもん。