その男性は、我妻が贔屓にしている情報屋だった。

ホームレスというのは、意外なほどに情報通だ。

数多くのホームレス仲間とネットワークを共有し、表裏を問わず、あらゆる社会の情報に精通する。

下手をすれば警察の情報網よりも優秀である。

「奴は出所したか」

我妻は無表情に呟く。

「…娘さんを監禁していた男ですか?出所なんてできやしませんよ」

日本酒を一升瓶のまま呷りながら、ホームレスの男性は言う。

「懲役23年ですよ?出て来る頃には白髪だらけになってますよ」

「……」

我妻は無言のまま。

出来る事なら、この手で殺してやりたい。

娘を数年間も苦しめた復讐を、この手で直接成し遂げたい。

そう思いながら、何とか警察を辞める事なく続けている。