私のお父さんと同じぐらいの歳の男性。
背格好も何処か似ている気がする。
娘の呼び名も……お父さんが私を呼ぶ呼び方と同じだ。
『サチ。こっちおいで』
優しくて温かいお父さんの声が頭の中で聞こえる。もう何年も声を聞いていないのに、あの声と笑顔は忘れたことがない。
サラリーマンから背を向けて、また歩き出す。
お父さん……何処にいるの…?
助けて…私をここから連れ出してよ…
目をギュッと瞑る。
今はもう何処にいるのかも、生きているのかすらわからないお父さんに、私は何度願っただろう。
何度願っても、届くはずがないのに……
〜〜♪〜〜♪
ふと、陽気な音楽が聞こえた気がして、その方向を振り返った。
その音は、騒々しいぐらい元気な八百屋のおじさんの客呼び込みの声や主婦の話し声の合間に微かに聞こえてくる。
それは商店街を抜けた先の方から……
あそこは……失礼な金髪男がいた時計広場だ。