「充くん、その……“D”の中に……」


チヒロはいた?と聞こうと思ったけど止めておいた。


だって、もしチヒロがいなかったら智広くんが充くんを裏切っていたって事を暴露する事になる。


今隠しても後々バレるだろうけど、でも、このタイミングで言うのは充くんにとって酷過ぎるだろう。だから聞かない方がいい。


そう思っていたのに。



「凛音さん、ありがとうございます」


「へ?」


「凛音さんが聞きたい事って智広の事ですよね?」


「……っ、なんで……」


まさか充くんの方からその話題を振ってくるとは思わなくて、馬鹿正直に顔を引きつらせてしまった。



「智広、“D”だったんですね」


「……っ」


充くん、知ってたの……?


そう言えばさっき智広の番号が消されてたって言ってた。


それを知ってるという事はチヒロがその場にいたという事になる。


だとしたら、余りにも酷過ぎる。


充くんを裏切っただけじゃなく、チヒロ自ら充くんに手を掛けるなんて。


そんなの、人として最低だ。



「すみません。俺が敵を……“D”を鳳皇に入れたんですね」


「違う!充くんはチヒロに利用されただけだよ!充は悪くない!」


「凛音さん……」



そうだよ。充くんは悪くない。


チヒロは鳳皇に入り込む為に充くんに近付いてきたんだ。


鳳皇に近付く為に充くんと友達になった。


ただそれだけの為に友達になったんだ。


そんな非情な事ってあるだろうか。


充くんはチヒロの事を本当の友達だと思っていた。


それをチヒロは踏み躙ったんだ。


充くんの心を踏み躙った。

許せない。