興奮しきっているあたしは自分が何を口走っているのか理解してなくて。


自分の想いを無我夢中で十夜に伝えた。


それがいけなかったのだろうか。


「こんの馬鹿野郎!テメェには学習能力というもんがねぇのかアホンダラ!!」


「いっ゙、たぁーい!!」


階段の上から思いっきりジャンプしたあたしを見ていたのか、煌が般若の様な形相で階段を駆け上がってきて、蝿を叩くかの様にあたしの頭を容赦無く叩いた。


バシンと良い音が鳴ったかと思えば、間を開ける事なく思いっきり左頬を引っ張られる。


「いひゃい!」


「何回も何回も同じ事言わせやがって!しかも何こんな所でプロポーズしてんだよお前は!」


「プロ!?」


煌から飛び出した言葉に何の事だと驚く。


当然だ。あたしに分かる筈がない。


だって自分が言った事を理解出来ていないから。




「──遥香、お前凛音に何言った?」


へ?遥香さん?


「ん?十夜が小学三年生の時までおねしょしてた事とか?」


「おまっ……」


「え、十夜が小三までおねしょ?」


いきなり現れた遥香さんにも驚いたけど、それよりも遥香さんの発言の方が驚いた。


だって十夜がおねしょって……。


「……プッ」


思わず吹き出してしまった。


「笑うな」


「ごめん」


耳元で不貞腐れた声が聞こえたかと思うとゆっくりと揺れ始めた身体。

どうやらこのまま移動するらしい。



「お前、絶対に動くなよ。ジッとしてろ」


「……ラジャ」


すぐ目の前にいる煌ママは階段を上がりながらあたしを見張っていて。


少しでも動こうもんならまた張り手が飛んで来そうな勢いだった。


でもまぁ、うん。さっきのは自分でもやり過ぎたと反省している。


十夜に受け止められたから良かったものの、受け止められてなかったら階段から転がり落ちていた。


……うん。想像しただけでも痛い。勢いで行動するのは止めよう。