鏡の中に映る自分を見て思わず笑みがこぼれた。


「……いいじゃん」


首を斜めに傾げたりして左右をチェックする。


雑誌の可愛い髪型ではないけれど、納得するヘアスタイルができたならそれでいい。


樹は部屋にかかっている壁掛け時計を見てハッとした。


のんびり満足している場合ではない。


「時間、ヤバッ!」


バッグとコートを片手に慌てて玄関へ向かった。


ロングブーツの片方に足を入れる。


もう片方に手をかけた時、忘れ物に気付いた。


「携帯……!」


樹は履いたばかりのブーツをポンと飛ばして、ソファーに置きっぱなしになっていたスマホを取りに行く。


スマホをバッグにしまうのと同時に忘れ物を確認して、再びブーツを履いたらアパートを出た。