そこに、「悪い、悪い、待たせた。部屋ちゃんと取ってきた」なんて呑気に現れた徹に私は軽く舌打ちした。

「もしかして…お取り込み中だった?」なんて言う徹に私は、遅かったね?って言ってやった。

苦笑しながら、特に言い訳するわけでもなく、ゴメンと素直に言ってくれたので許してあげる。

「で、なんのはなし?」と話題を変えてくる徹。

「何でもないわ。早く荷物置きたいから部屋いこう!二人とも、また後でね!!」と私は言い残すとスタスタ歩き始めた。

私は確信した。あの子だと。そして、ウチでの育成プログラムに参加するメンバー候補の一人として…。

確かに…あれで接客業である、ホストは不合格だけど、あの子には何か…感じるものがある。

武信は私が大切にしてきた人。人としても、男としてもカッコいくて、いつも頼ってた。

たくさん相談にものってもらった。私は頼りにしてたし、信じてた。

ううん、過去形なんかじゃない。武信の目に狂いはないことくらいわかってる。

だから武信はアキくんを選んだんだよね?

そうだと信じてるよ。

徹にいきなり腕を掴まれた。

「ずいぶん険しい顔してたけど?」と徹は言う。

「彼だと確信したのよ。ウチの育成プログラムに参加する子。だから…あの子にどう、ホストの魅力を伝えようか考えてたところ」と私が言えば、

「…アウトだろ…あれ…」ってハッキリ徹は言った。

「だから私が出した答えは不合格よ。けど、伸びしろがあるかもしれない。武信くんの目に狂いはない」と私は言い切った。

しばらくして、私たちの部屋に着き、徹と私は荷物を置いた。

徹は「俺寝るから…」って。

えぇっっ?今から寝るの!?

確かに…今日は特に予定なく寝ても問題ないけど…。

「明日からだろ?本格講義は…。鍵持ってて。行ってら~」と徹は言ってベットに寝転んだ。

私は言われた通り、鍵を持って部屋を出た。

何となくロビーに来てしまった。

あてもなくとりあえずソファーに腰を下ろした。