初めてユウと出会ったあの桜の木。




あの大きくて立派な桜の木。




「お前が事故にあったあの晩は満月だったそうだ。そしてあの桜の木は、あっちと繋がっている」




あたしが落ちた桜の木は、不思議な木だ。



マロがいつか話していた。



あの桜の木は千年生きる木。





生きている千年間ずっと花が開いている。



水を与えずとも生きる不思議な木。




そしてあの木は妖を寄せ付ける危険な木。




「…千年桜」




高林がいつの間にか立ち上がって夕飯の支度をしていた。




あたしは高林に出かけてくると言い、外に飛び出した。




台所から、高林が太陽が沈むまでには帰ってこいと言ったのが聞こえた。




あたしはゴクリと喉を鳴らし、千年桜まで走り出した。