いよいよ100メートルバタフライ決勝。
立ち上がりたくなる気持ちをぐっとこらえ、視線を注ぐ。


地方の大会では大きく見える彼も、ここに来るとごく一般的な背の高さに見える。
皆大きいからだ。


予選のタイムでは5番手。
でも結城君の持ちタイムでは、十分優勝できる可能性がある。

15歳まで一緒に戦う全中とは違い、13から14歳という区分で泳ぐからだ。


「頑張れ」


笛の音と共に選手が飛び込み台に立つと、会場が一瞬にして静まる。
このピンと張りつめたような空気が、余計な緊張をあおってくる。


――用意、ピッ。


呆気なく始まったレースは、結城君が引っ張る形。

今回は短水路と言われる25メートルプールで行われる。
だから4往復。

彼は後半型なのに、前半からグイグイ飛ばす。