だが、遥人はそんな那智の心を読んだように言ってくる。

「あの家は厳しいんだ。
 外泊はできない」

「すみませんねー。
 ゆるい家で。

 なにか飲みますか?」
と言うと、コンビニで買ったらしい朝食を渡してくれた。

 ビニール袋の中を覗いたあと、
「まあ、どうぞ、ごゆっくり」
と言いながら、カーテンを開ける。

 別に朝食につられたわけではない。

 テレビの前のテーブルで二人でそれを食べた。

「で?」
「は?」

「なんなんだ、あの男は」

「はあ。
 ですから、あれはお母さんの……」

 那智はそこで口ごもる。

「あれが母親の恋人か」

「まあ、そんな感じで」

「それがなんで、お前に張り付いてる」

「張り付いてるわけじゃありませんよ。
 言いませんでしたっけ?

 此処にもよく立ち寄るだけです」

「……お前、あのとき、その桜田を見てたのか」

「はい?」