「今日までの企画書のことでまたキツイこと言われたんでしょ? アイツね、口は悪いけど霧川村の一件で、宮城ちゃんのこと買ってるのよ。出来ないヤツだと思われたら仕事なんて振らないし、むしろ余計なことも言わないから。私や間山に丸投げだったり。だから厳しいこと言うかもしれないけど、それだけ評価してるってことだからめげずに頑張ってね」
近からず遠からずというか、ここは三宅先輩の言葉に素直に頷いておくのが吉だ。
「はい、ありがとうございます」
「おはようございます」
そこで三宅先輩と声をした方に視線を向けると、小池さんがこちらに向かって頭を軽く下げていた。三宅先輩と共に挨拶を返し、エレベーター前ですれ違う。
小池さんの表情からあの後、どんな会話をチーフとやりとりしたのかさっぱりわからない。でもこれなら小池さんから見ても、私と三宅先輩は今エレベーターで一緒になって出社してきたようにしか見えないはずだ。
「今の総務部の小池さんだよね? 噂にもよく聞くし載ってる雑誌で見たことあるけど、やっぱり美人ねー」
小池さんがエレベーターに乗った後、三宅先輩に話題を振られて少し小池さんの話で盛り上がった。そのまま一緒にフロアに向かってチーフに挨拶すると、チーフもやっぱりいつもとなんら変わりなかった。
それに安心したような、どこか複雑なような。とりあえず頭を切り替えて、私は当初の目的であった企画書をもう一度練り直して提出することに専念したのだった。
それからニ、三厳しい指摘は受けたけど、午前中にはなんとか企画書を提出出来たので少しだけほっとする。提出するとき、今朝の小池さんと同じ立ち位置に自分は立っていた。
チーフは、小池さんの申し出になんて答えたんだろうか。恐らく……断ってくれたのだと信じている。それは、私を気遣ってのことなのかもしれないけど。
ただ慎二は同じように後輩に告白されて、私と付き合っていたんだけど断れなかったんだよね。揺らぐものがあったんだ。なんだか妙な胸の痛みを感じながら私は仕事に戻った。
ケータイ小説 野いちご
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