一年と少しの間、私は小説家である日向のただの担当編集者だった。

 日向がその関係を崩したのは、一年ほど前。

 黄色く色づいた公孫樹の葉がはらはらと舞う夕方に、彼は私に魔法をかけた。

 私がずっと彼のそばから離れないように。

 あの日、彼がくれた言葉たちは、決して愛を象っていたわけじゃない。

 けれど、私の心は彼に囚われてしまったし、体は望まれたまま彼の隣にある。

 寡黙を貫くその唇に反して彼の瞳は饒舌で、幾つかの夜を経た今も彼のかけた魔法は解けてはいない。

 むしろそれは、日に日に効力を増すばかり。