何度拒否しても近寄って来ようとする十夜に両手でストップを掛けると、その場から一気に駆け出した。


十夜から逃げるにはここから退散するしかなさそうだ。



「凛音」

「貴兄!」


ちょうど走り出した方から貴兄が歩いてきた。

貴兄の後方には両幹部達もいる。


「コラ、暴れすぎだ」


近寄って来るなりそう言った貴兄は苦笑しながらあたしの頭をコツンと小突いた。


そんな事言われても、と唇を尖らせながら拗ねていると、後方から歩いて来た煌と目が合って。


ニタリと不気味に笑われる。


なんか嫌な予感。


「凛音ちゃん、暴力コワーイ」


「キモッ!煌喋んないで!」


猫なで声というか、オカマくさい声というか。


取り敢えず気持ち悪さMAXな煌の声にマッハで両腕を擦るあたし。


「テメェ、キモいって何だよ!」


「キモいモンはキモいのよ!」


「本当の事言っただけだろうが!」


「あたしが言ってんのは声の方だし!っていうか、あたしのは暴力じゃないもーん。空手で言う組手と一緒だしー。

あ、もしかしてあたしが強いから羨ましいんでしょ~?だから言ったじゃん、あたし煌より強いって~」


勢いよく捲し立て、最後にベーッと舌を出す。