《ゼロside》
「俺は魔獣達を倒すのに全ての魔力を使うからな。
町までの帰り道は、ジンの浮遊魔法で帰ること覚えとけよ?」
魔獣の群れを引き連れながら、俺はジンの背中に乗ってそう言った。
ジンは「わかってるよ。」笑いながら答えて、続けた。
「……お前の魔力を疑ってる訳じゃないけど今回はちょっとキツいんじゃないか?三十匹だぞ?」
「……やるしかねぇだろ。」
ジンは、少し黙って、それから目の前を見ながら言った。
「フィオネちゃんに無事に帰るって約束しちゃったもんな。
…お前なら、やってのける気がするよ。」
勝利の女神がついてるもんな、と
ジンは笑った。
そうだ。
ここでフィオネのいる願いの町に、魔獣達を近づける訳にはいかない。
なんとしてでも、俺が食い止める。
ジンは、そのあと無言で飛び続けていたがふと、俺に向かって口を開いた。
「ゼロ。…せっかく二人きりになったから聞くけど…。
お前、“迷い”は消えたのか?」