「ねぇ、十夜!」


「……知らね」


「ズルイ!自分は言わせたくせに!」


「あ、流れ星」


「えっ!?どこどこ!?」


「もう消えた」


「えー、十夜ばっかりズルイー。あたしも見たかったぁ……」



まさかそれが十夜のついた嘘だとは思わず、星空を見上げながら真剣に落ち込むあたし。


「……ま、いっか。満月と星見れるし」


「週末」


「週末?」


「N県で今年最後の花火がある」


「花火!?」


「行くか?」


「行く!」


まさか花火が見れるなんて思ってもいなかったあたしは一気にハイテンションに早変わり。


一人でキャッキャはしゃいでいると、十夜は「現金な奴だな」と呆れた顔で苦笑していた。




「……ねぇ、十夜。来年も一緒に花火見に行こうね」



満天の星を見ながらぽつりとそう呟く。


今、流れ星が落ちたら、きっとあたしはそうお願いする。


“あの時”、十夜と共に誓ったように。



『来年も連れて来てやるよ』



十夜と交わした約束。

小指の約束。




「来年だけじゃねぇよ」


「……え?」


「来年も再来年も、その先もずっとだ」


「十夜……」


夜空を見上げながらそう言った十夜はおもむろに振り向くと、スッと左手の小指を差し出してきた。


その小指を見てまた涙が溢れ出す。



「……約束、だよ」


「あぁ」


そっと絡まる誓いのシルシ。




──来年も、一緒に。




そう小さく呟くと、どちらからともなく距離を縮め、そっと唇を重ね合わせた。






ベンチの上で繋がれた左手。


右手の小指は約束の誓い。



何度も何度も熱を交わし、永遠の約束を誓い合った。






──願わくば、


来年も花火が咲く満天の星の下で“誓いのキス”を。