「そのときの面影が忘れられなくて、とか」
と言われ、マジマジと昌磨を見る。

 やめろ、と額をつかれて、離された。

「うーん。
 面影か。

 はは……そうですね」
と笑うと、どういう意味だ、と昌磨が横目に見る。

 いやあ、昔はもう少し可愛かったですよね、と思ったのだ。

 当たり前だが、子供のピュアさは大人にはない。

「でもまあ、お兄ちゃんも一発でわかったみたいですしね」

 そう言うと、昌磨は渋い顔をする。

 やはり、あまりみなに知られたくないのだろうかな、と思った。

 なんでなんだろうなあ。

 イタリアではあんな有名人だったのに。

 うちのお兄ちゃんとかだったら、自分では言わないけど、私には、きっと自慢させるな、と思う。

「……甘い」

 頼んでおいて、花音はカルーアミルクにケチをつけた。

「じゃあ、なんで頼んだの。
 今日はデートだから、可愛らしく女の子が頼みそうなお酒にしてみたの?」
と良が微妙に毒を吐く。