浜辺で遊んだ後、石廊崎灯台まで、ボクらは足を伸ばした。
夏の夕暮れに、青色の海は、黄金色にその輝きを変えていた。

「キレイだね………」

ポツリと、ボクの隣でひとみさんが呟いた。
ボクも、彼女の言葉に異論はなかった。
コクリと頷いたボクを、ひとみさんは眩しそうに見上げた。

「あぁ~、ホントは泳ぎたかったんだけどね。しかたないか」

彼女はいつもの口調でそう言った。

「また、来年、来ればいいことじゃないですか?」

ボクは笑顔で彼女に言った。

「来年ねぇ」

そう言って彼女は口を噤んだ。

どうしたんだろ?

不思議そうに自分を見つめる、ボクの視線に気付いたのだろうか、ひとみさんは慌てて口を開いた。

「いや、ほら、アレよ。来年になんかなったら、今年の水着なんて流行遅れじゃない!」

彼女の言葉に、軽く違和感を感じたが、

「流行りなんか気にする年齢でもないでしょ」

と、彼女に軽口を言って、ボクは話を切り上げた。

「なによ、それぇ、最近、駿平君の言葉、かわいくないっ!」

そう言いながら、ひとみさんはひとりでプリプリ怒り始めた。

「それって、ひとみさんの影響ですよ。それより、腹減ったし、戻りましょうか?」

そう言って、ボクは車に向かった。
彼女もボクに従った。
そして、おもむろに、ボクの腕に手を絡めてきた。

「ありがとう、駿平君、すごく楽しかったよ」

夕日に光る海よりも、彼女の笑顔は輝いて見えた。