呼吸を忘れてしまうほどの驚きに、ボクの体は突然熱を帯びたような気がした。

「あら!スゴい熱あるじゃない!寝てなきゃダメよ!」

ボクがどういう状態なのか、知る由もないひとみさんは、ボクからパッと離れると棚に置いてある薬箱から体温計をとってきた。

いや、多分、熱は大したことないと思いますけど………
アナタの顔を間近で見て、興奮して熱が上がっただけだから………

そう、心の中で呟いた。
とても口にできる言葉ではない。
それにしても、女性に免疫がないと、おでこで熱計るだけで熱は上がるものなんだなぁ……初めて知った。

そんな事を考えていると、ひとみさんはボクの口に体温計を突っ込んだ。
しばらくすると、体温計から電子音が鳴る。
ボクの口からヒョイと体温計を抜いた彼女は、その表示を見て驚いた。

「しゅ、駿平君!39℃もあるわよ!」

さすがに、39℃ともなると、興奮のせいではないだろう。
完全に風邪だな。

「寝てなきゃダメよ!支度してくる」

そう言い残して彼女はボクの部屋へと消えていった。

人間の体って不思議なもので、高熱を示す体温計の表示を見たら、急に具合の悪さが加速していった。
なんとなく立ってるのもしんどくなってきた。
目の前がボヤケていく……
見上げた天井は、波打つように歪んで見える。

そして、ボクの世界はそのまま白い霧に包まれていった。