完全にひとみさんは気を失っていた。
その時、彼女の胸の上にあった黒いシミは動き出した。
やはりそれはシミではなく、ゴキブリ本体であった。
ヤツは素早くひとみさんから離れ、再び物陰に隠れようと床を走り出した。

させるかぁっ!!

ボクは右手でひとみさんの体を支えながら、左手に新聞紙の棒を持ち、それをヤツに向かって振り下ろした。

なにか、とてもイヤな感触が手に伝わった。

ボクは、ヤツとの戦いに勝利を収めた。
だが、その勝利の代償はとても大きかった。

目を醒ましたひとみさんは、こう言った。

「あんな、ゴキブリのいるような台所には2度と入らない。だから、台所関係の仕事は全部、駿平君がやってね!」


結局、皿洗いまでボクがすることと相成ってしまった…………