やっぱり、恭は意外とこの格好が様になっている。


メガネも外して、いつもより妙に頼もしい雰囲気になる恭は、やっぱりいつ見ても見慣れない。


「俺は大丈夫ですよ。手が冷たいのは
、少し緊張してるからかな。」


「緊張?恭が?」


いつも何事にも動じない恭なのに?



「俺だって緊張くらいしますよ。わざわざ敵の輪の中に大切なもの晒しに行くようなものですからね。何があってもおかしくはないと、常に思っています。」



それを聞くと、なんだか申し訳ない気持ちになる。


恭の傷を知っているから……。



恭が、自分のせいで大切なものを失う事、大切なものを守れない事をどれほど恐れているかよく知っている。


それなのに、あたしのせいでこんな事になってしまって……。


今恭は、どんな気持ちでいるの?



無意識に恭の腰に回している手に力が籠る。


「ふっ。大丈夫ですよ。」


笑ってる?


「不思議と前みたいな気持ちではないんです。」


「え?」


「前は、もしこうなったら?もしああなったら?って過去に囚われて、先の事まで心配ばかりしていました。」


ブォンと鳴り響くエンジン音。


気付いて後ろを見てみると、夜の闇の中に見えるヘッドライトの群れがさっきよりも増えている。


これ、みんな恭についてきているんだ……。



「でも、今は違う。」



こんな大音量の中でも、優しく、でも強く響く恭の声。



「どんな事になっても、必ず茉弘を守る。
自分の命に代えてもね。」


自信に満ちた恭の声。


あたしの心臓が、心地よい音を立てる。



恭……かっこいいよ……。


かっこ良すぎるよ……。


好き……


大好き……