妻になる人の心配よりも、認知症だと診断された年寄りの方を気遣わないといけないのは情けない。
がっかりしながら顔を見ると、彼女は半分寝ぼけた感じで答えてくれた。


「…してないですよ……病院から帰られた後もお疲れかな…と思ったんですけど、とてもお元気でした。
昨日と同様に『ユイカ』さんの好きな物を作ろうか…と言われたんですけど、あたしがあまり食欲がない…と言ったら、『じゃあ雑炊にしようか』と言われて、それを作って下さいました。
ちょっと量が多かったけど、おばあちゃんのトッピングアイデアが冴えてて、最後まで残さずに食べれました。
おばあちゃんのお料理の腕前はすごいですね、ご病気を感じさせないくらいによく覚えていらっしゃってて……感心します…」


話を聞きながらチャラそうな医師が言ってた、その道のプロだという意味が知りたくなった。

彼女の視点は姉とは違う。
祖母の悪い点ばかりを見ていた姉とは反対に、いい面ばかりを見ようとする。
出来る事を見つけ出し、それを最大限発揮させようと付き合う。
何処かどっしりとした構えのように感じさせるのも、そういう余裕があるせいなのかもしれない。



(一体、何の仕事をしてたんだろう…?)


疑問に思ったが、本人に聞くこともできない。
自らが語りたがらないのにはワケがある。
それをこっちの好奇心で聞くよりは、本人が話す気になるまで待った方がいい。

いずれ教えてくれるか…と諦め、体調のことを尋ねてみた。