扉をゆっくり慎重に開けると、数センチほどの隙間から中の様子を窺う。


物音は一切聞こえず、人の気配も感じない。


これならイケると確信したあたしは、ドアノブを手前に引き、物音を立てないように工場の中へと足を踏み入れた。



電気が通っていないせいか中はかなり暗くて、扉から射し込んでくる光がなければ前に進めそうにない。


足元には木片やホコリがあって、この工場がだいぶ前に閉鎖した事を物語っていた。



先へと進むと、此処は屋上へ行く為だけなのか、数歩進んだ所に下へと繋がる階段があり、ゆっくりと階段下を覗いてみれば、そこには人工的な光が。


さっきまで居た工場もそうだけど、何故閉鎖された工場に電気が通っているのかと疑問に思った。


まぁそんな事はいいか。



折り返し階段を慎重に下り、下りた所で左右を確認する。


誰も居ない事を確認すると忍び足で通路を進んだ。


進む方向は勘で決めた。


取り敢えず今は自分の勘を信じるしかない。




気を張り巡らせながら歩いていると、前方に少しだけ開いた扉を発見。


早く先へ進まなければいけないという事は分かっていたけど、何故か妙にその部屋が気になってゆっくり扉を開けてみた。


電気をつけてみると、視界に入ってきたのは壁一面のロッカー。


それを見た瞬間、此処は作業員達の更衣室だという事を悟った。


キョロキョロと室内を見回すけどコレといって何もない。


勘が外れたか。


そう思い、踵を返した時、ドスッと足先に何かがぶつかった。


視線を落とすと、そこには正方形の段ボールが。


蓋は開いていて、“何か”が見えている。


手を伸ばし、そっと蓋を開けてみた。



「コレ……」