まずい。


また言い合いになりそうだ。


こんな密室で、しかし朋樹みたいに筋肉のついている男を怒らせるのは女子にとって危険だ。


「まぁまぁ、落着けって朋樹」


そう言ったのは、あたしの左隣に座っていた旺太だった。


あたしは旺太が発言してくれたことにホッと胸をなで下ろす。


「って言っても、こんな状況じゃ荒れる気持ちになるのもわかる。一体いつまでここにいればいいのかもわからないんだからな」


そう言い、旺太はゆっくりと立ち上がりメンバーをグルリと見回した。


「気晴らしに、みんなの事をもう少し聞かせてくれないか?」


「もちろん、いいよ」


すぐにそう言ったのは、色白の優志だった。


優志の幼さの残る笑顔に周囲の空気が少しだけ和むのを感じた。


「じゃぁ優志に質問だ」


「何でも聞いていいよ」


「優志は、今日どこへ向かう予定でこの電車に乗ったんだ?」