「凛音、お前は此処で総長が帰ってくるまで待ってるんだ」


「……待ってる?」



突然慎から投げ掛けられた言葉。


その言葉に直ぐ様視線を戻す。



……何?ちょっと待って。


もしかして──



「もしかして、それだけ?」


「それだけって?」


「待ってるだけかっていう意味」


「そうだな。待ってる間お前は俺とお喋りだ」


「………っ」


にっこりと笑って見せる慎にグッと眉を潜める。



……あたしは本当に“待っている”だけなんだ。


鳳皇と獅鷹が喧嘩している間、あたしは此処で待っているだけ。


何もせず、ただ貴兄が帰ってくるのを待ってるだけなんだ。



……そんな事、



「お前と喋りたい事沢山あるんだよなー。取り敢えずそこに座れよ」



そんな、事……。



「……っ、」


慎があたしに背を向けた瞬間、あたしは鉄パイプ目掛けて思いっきり走った。


山積みにされた鉄パイプから一本拝借し、その一メートルはあるであろう長い鉄パイプを大きく振り回す。



「凛音、お前、何する気だよ?」


慎が振り向いた時には既に遅く、あたしは慎に向かって鉄パイプを突き出していた。


それを見た慎が、ゴクリと喉を鳴らして待てと言わんばかりに両手を突き出す。


慎の瞳には動揺の色が浮かんでいて、鉄パイプの先が微かに揺れ動くと、それに比例して慎の足が一本後ずさっていった。