──貴兄、


どうして中田に協力したの──?



心中で零れる疑問の言葉。


何度も何度も頭の中で反芻される貴兄の言葉に、少しずつ思考が狂わされていく。



貴兄、どうして……?


声には出せない想い。

いや、出せないんじゃない。出ないんだ。


今起きている現状が非現実的に思えて、とてもじゃないけど言葉にならない。


見開かれた視界に映る光景は確かに今行われている筈なのに、何処か遠くの方に感じて。


まるで膜が張ったかの様にボヤけて聞こえていた。


だけど、視界だけは鮮明すぎる程鮮明に三人を映し出している。


小刻みに震える唇へそっと指先を添える。

足に力が入らない。


まるで自分のモノではない様な感覚に陥って。


確かに震えている筈なのに、その感覚が全くと言っていい程感じられなかった。



「時間は?」


「……奴等が来れば連絡が入る」


けれど、聴覚と視覚だけはハッキリしていた。



“奴等が来れば連絡が入る?”


奴等、って?

奴等って誰?


まさか、


まさか──



「──鳳皇は強い。外にいる奴等を中へ入れて鳳皇にぶつけろ」



まさ、か……。


貴兄の言葉が鋭い矢となって脳に突き刺さる。



「外には獅鷹もいる。そんなにいらないだろう?それに何かあれば奴等もいるんだ」


「………」


「外は足りてる。だから中を増やせ。中には鳳皇幹部が揃ってるんだ。数は多い方がいいだろう?」