人の恋愛関係見てきてるだけあって、鋭いツッコミを入れる。
男を見る目が無い…と散々言われ続けてきたあたしに、今回の相手は吉と出るか凶と出るか……。




「…失礼ます」


お店の仲居さんの声だ。相手がやって来たのかもーーー……


息もできないくらいドキドキしてきた。
スッと開く襖の音に耳を傾けながら、チラッと目線を上げた。


「こんばんはー、愛理ちゃん!」


ガクッと項垂れる。
これ程キンチョーしてるあたしの目の前に現れたのは、お見合い写真を持ってきてくれた仁科の叔母。

父の従姉妹にあたる仁科さんは、嬉しそうに母の前に座り込んだ。


「ようやく愛理ちゃんがお見合いする気になったと聞いて、叔母さん嬉しくって!今回の人はこれ以上無いくらいの良縁だからね、何が何でも失敗しない様にしなくちゃ!」


余計なプレッシャーを掛けてくる。
おかげで、トイレに行きたくなったじゃん。


「……あたし、ちょっとお手洗いに行ってきます…」


スッと立ち上がったまでは良かった。
でも、足裏がここまでシビれてるとは気づかなかった。

ビリビリと電流が走ってる様な足元は、下駄か何かを履いてるような感覚がする。

地に足が着いてない感じ。
着いてるけど足裏には感覚がまるでない。

しかも、親指が真っ直ぐと伸びてなかったみたいで、おかげで歩き出して直ぐにつんのめった。


「あっ!!」


危うく襖に頭を突っ込むところを救われた。運良く突っ込まなくて済んだのは、代わりに誰かにぶつかったからだ。

タイミング良く開いた襖の向こうからやってきた人に、あたしは頭から突っ込んだのだ。