朝食を食べ終わり、宿のフロントへと行くと、マリーが慌ただしく書類の整理に追われていた。
そして私たちを見つけると
「あら!よく眠れたかしら?」
と、声をかけてきた。
「そうそう。町に出るときは気をつけてね。魔族狩りがまだうろついてるかもしれないから。
奴らのせいでこーんなに予約キャンセルの電話が来てるのよ!」
怒ったようにそう言うと、マリーはまた
テキパキと整理の続きに入る。
“魔族狩り”?
ゼロの方を見ると、険しい顔付きで何か考え込んでいる。
「ねぇゼロ。“魔族狩り”ってなに?」
私が尋ねると、ゼロは表情を変えずに答えた。
「要は、魔法使い同士の魔力の奪い合いだな。
魔力が強い魔法使いは、賊に落ちた魔法使いに命を狙われやすい。
上級魔法使いは都市に通じてるやつも多いからな。」
私は魔法使いのいない町で育ったから、そういうものがあるんだとは知らなかった。
魔族狩りって言うのか…。
大きな魔力を使えば魔獣にも命を狙われるし。
魔法が使えるって言っても、いいことばかりじゃないのね。
「やっぱり、この町からは早めに出た方がいいかもな。嫌な予感がする。」
ゼロがぼそっ、と呟いた。