旅は基本歩きだから、ゼロと話をすることも増えたけど
都市部のことは、ゼロがなんとなく避けているような気がするからあまり聞けていない。
「さ、そろそろ行くぞ。」
ゼロはそう言ってテントをしまう。
野宿をすることになって、私は初めてテントで寝た。
ゼロの手持ちのテントは私が入ってちょうどいいぐらいの大きさだった。
ゼロは、今まで広々と使っていたので少し窮屈そうだが
なんせまだ幼い少年サイズなので、二人で並んで寝ても、そこまで不自由はしなかった。
私はゼロの後に続いて歩きながら、彼の背中を見る。
闇町で守ってくれた時の、あの大きな背中と同一人物とはやっぱり思えない。
私は、元の姿に戻ったゼロのことは背中の方を多く見ている気がする。
正面から向き合ったことは少ない。
帰るぞ、と言われた時と、闇町の上空を飛行中に横顔をちらり、と見たぐらいだ。
………もう一度。正面から見てみたい。
そんな思いが私の中にはあった。
「何してるんだよ。早く行くぞ。」
邪念を振り払って、私はゼロの横を歩いた。