「…未來。もう朝よ、起きて。…未來ってば。」

『んん~…っ』


私の掛け声も虚しく、未來は嫌々と言いたげに私に背を向ける。

彼女にとっては人生最悪と言っても過言ではない日の翌朝だ。私だって鬼じゃないし、このまま彼女を寝かせておきたいという気持ちはある。

でも……なんたって今日は平日。私は会社に出勤しなければならない。


「未來、お願いだから起きて。…遅刻するよ、未來。」

『ん…っ、み、のり…?』


言葉尻を強くして声をかけると、やっと彼女は重たい瞼を上げてくれた。


「おはよう。もう朝だよ。」

『ん、おはよ…っいッ――!!』


起き上がった未來は、瞬時にキリキリと痛んでいるだろう自身の頭に手を当てた。


『あ、たま……この上なく痛い…』

「そりゃあ、あれだけ飲めばね。」


私が昨日飲んだのは、積んでも缶ビール2、3杯だ。

でも、未來は確実に私の数倍は缶ビールを飲み干している。

昨夜、未來が来たときは缶ビール2ダース分はあったっていうのにね…。

頭だけじゃなく、硬いフローリングのせいで身体の節々も痛いらしく、未來は一層顔を歪ませていた。