翌日の土曜は休みだから、俺としては詩織との惰眠を貪り、もちろん眠るだけでなく、昨夜の続きのあれやこれやを、何度も何度もしたかったのだが、出掛けていた。

 昔は車を持っていて、よく街道なんかをかっ飛ばしたものだが、プチ暴走族だったんで、今ではすっかりペーパードライバーに成り果てていた。そこで、俺達は駅の傍にあったレンタカーショップに寄り、車を借りた。ワゴンタイプのやつを。

 その車で俺達はドライブ……なら良かったのだがそうではなく、車は詩織のアパートへ向かっている。詩織の、当面必要な荷物を取りに行くためだ。

 あれは、つい今朝の事だった。


 サラリーマンのさがか、俺はいつもと同じ時間に目が覚めた。だが、今朝はいつもの朝とは全然違う。なぜなら、俺の横にはあの愛しい詩織が……って、いねえじゃん。

 横で寝ているはずの詩織に触れようと、俺は邪心を抱きつつ手を伸ばしていったが、どこまで伸ばしてもその邪な手は、詩織のあの触り心地のいい肌に届く事はなかった。


 まさか、俺は夢を見ていたのだろうか……

 なんて、ベタな事を一瞬思ったりもしたが、あれが現実である事を物語るかのように、枕や布団には詩織の甘い残り香が……って、枕が2つある時点で決まりなのだが、更に布団と毛布をめくれば、シーツに例の赤い印が着いていた。


 もしかして、詩織は帰ってしまったのでは?

 という、これまたベタな事を一瞬考えた俺だが、そうでない事はすぐに分かった。キッチンの方から、コーヒーのいい香が漂って来たからだ。

 俺は床に落ちていたトランクスを履き、シーツを丸め、それを後ろ手で持ってキッチンの方へ向かった。つまり、今頃はコーヒーメーカーと格闘してるであろう、詩織の元へ。