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教室に戻ったあたしに、杏里が声をかけてきた。


「どこにいってたの?」


「颯のところ」


「朝から会いに行くなんて、珍しいね」


その言葉にあたしは頷く。


そして、最近颯の行動が気になるのだという事を伝えた。


「なにが気になるの?」


「颯は将来の事何も考えてないみたいなの。話をすれば希彩ちゃんの事ばっかりだし、希彩ちゃんが成人するまではずっと家にいるとか言ってるの」


そして、困った顔を浮かべるあたし。


杏里もその話には目を見開いて「自分の将来の事なのに、妹が中心になるなんておかしいよね」と、言った。


その通りだ。


本当は監視カメラの事まで言ってしまいたかったけれど、さすがにそれは我慢しておいた。


「だからね、しばらくは颯と一緒にいて、今後の事を真剣に考えてくれるように説得するつもりなの」


「そっか。それがいいと、あたしも思うよ」


「うん。杏里と一緒にいる時間は減っちゃうけど……」


「そんなの気にしないで! 純白がしっかり者で、先輩ってば幸せ者だなぁ」


杏里はそう言い、微笑んだのだった。