さっきまで颯が持っていたナイフは女の胸に突き立てられ、そこから真っ赤な血が流れ始める。


なに……これ……。


さっきまでの怒りが急速に静まり、困惑に変わる。


颯は横倒しになった女の上にまたがり、ナイフを引き抜くとまた突き刺した。


何度も何度も繰り返しナイフを突き立てる颯。


その目元はほほ笑んでいるように見える。


颯は元々女を殺すつもりでここに呼んだのかもしれない。


大きなマスクは自分の顔を隠すためだろう。


やがて画面上は真っ赤に染まり、女は少しも動かなくなった。


1人になった颯は女の頬に唇をよせ、マスクをずらしてキスをした。


その光景にゾクリと背筋が寒くなる。


颯はこういう性癖の持ち主だったんだろうか?


でも、あたしと一緒にいるときにこんな素振りを見せたことはない。


ずっと我慢して、自分の気持ちを押し殺していたのかもしれない。


吐き気を感じながらも、颯が連れて来た女をズームにして確認する。


女は白を向き、口からポコポコと泡立った血を吐いて絶命している。


「希彩ちゃんに似てる……」


あたしはズームにした女の顔を見つめ、そう呟いたのだった。