「その人がどうかしたの?」


「昨日の放課後買い物に行ったら、偶然バッタリ会っちゃって……」


「うそ!? 声はかけたの?」


あたしの質問に杏里は首を左右に振った。


「どうして? せっかく会えたのに!?」


「それが……その人、女の人と一緒にいたから……」


そう言い表情を曇らせる杏里。


そうか、それで声をかけられなかったんだ。


あたしも、颯が別の女の人と歩いていたらきっと声をかける事はできないだろう。


「相手の人は、恋人なのかな?」


あたしが聞くと、杏里はまた首を左右にふった。


「わからない……」


「もしかしたら、妹とかお姉さんかもしれないよ?」


「うん。でも、あたしがいきなりそんな事を質問するのっておかしいでしょ?」


確かに杏里の言う通りだ。


相手からすれば、杏里を覚えているのかどうかも怪しい。