家族としても今は大切な時期だから、希彩ちゃんの事をきにするのはよくわかる。


でも、それを言えば颯だって今年が受験で大変なはずだ。


それなのにそんな事一切口に出さず、妹の事ばかりを気にしている。


まぁ、颯のシスコンは今更始まった事でもないけれど。


あたしはまだスマホをいじっている颯に飽きれたため息を吐き出して、昔の出来事を思い出していた。


颯はあたしと付き合い始める前から希彩ちゃんの事で頭がいっぱいだった。


1年前は希彩ちゃんは中学2年生で、京都に修学旅行へ行って来たらしい。


颯はそのおみやげにもらった大仏ストラップを、とても嬉しそうに鞄に付けていた。


家族思いの優しい颯にあたしは惹かれて行った。


けれど、こうしてあたしと2人きりでいても常に希彩ちゃんの事を気にかけていて、いい雰囲気になったことは一度もない。


そうなってくると、徐々に家族思いの面がうっとおしく感じられるようにもなっていた。