「……おい、そこで何してんだよ」



ある日、大嫌いな水泳の授業から逃げるように迷い込んだ、学校の片隅で。


小さな小さな、黒猫と出会った。


俺を見て逃げるでもなく、真っ直ぐに向けられた瞳は、はちみつ色に光っていて。


思わず数秒見つめ合い、声もない会話を交わせば先に動いたのは黒猫の方。



「にゃあん」


「うわっ、」



野良猫のくせに人懐っこいソイツは、俺が敵ではないと判断したのか、すぐに身を摺り寄せてきて。


その嘘のない、温かな体温に触れたら自然と心が絆されて、気が付けば俺も、その小さな身体を抱き上げていた。