『だから言ったでしょう、事前に買っておきなさいって!』

「ご、ごめん。まさか、こんなことになるとは思わなくて……」


目の前に妻が居る訳でもないのに頭をペコペコ下げる。


『とにかく子供達をあまり遅くまで居させる訳にはいかないから先に始めて、帰らせておくわ』

「うん……ごめん」


『いいのよ。あなたも仕事で仕方なかったのに私も言い過ぎたわ。気を付けて帰ってきてね、愛してる』

「ああ、僕も愛してる……それじゃ」



通話を終え、男性は一旦足を止めて呼吸を整える。


「ふう……さて、もうひと頑張りだ。早く帰らないとね……」

左手に持っている紙袋をチラリと見る。


紙袋の中に入っているのは娘が大好きなキャラクターのヌイグルミ。

可愛い一人娘が喜ぶ姿を思い浮かべて、無意識の内に顔が綻(ほころ)ぶ。



そんな彼に、背後から黒ずくめの人物が忍び寄ってきた。



「……ハッ!?」

人の気配を感じて振り返ろうとする男性。



ガヅッ



だが、彼が振り返るより先に脳天に硬い物体が叩きつけられ、殴られた衝撃そのままに倒れ込んだ。


「……ハア……ハア……」

血濡れた大きな石を持った黒ずくめの人物は、地べたに横たわり