「ついに、スポーツ祭まであと1週間かぁ」


「……はぁ、」



一年で最も存在の薄く感じる9月も後半に差し掛かり、段々と過ごしやすくなってきた頃。


頬杖をつきながら窓の外を眺めるミドリに、私は今日何度目かもわからない溜め息を吐いた。



「はーい、また溜め息。美月、この2週間くらいで幸せ逃しまくってるよ?」


「……何それ」


「えー、溜め息吐くと幸せ逃すっていうじゃん」


「だとしたら、そんなの、もうとっくに逃しきってるよ……」



ぺたん……と、机の上に突っ伏したまま、視線は勝手に、遠くなってしまった日下部くんの背中を追った。


今日も、こちらへと向けられることのない視線。


その事実に、溜め息と同じ数だけ胸が痛んだ。