本当。

世話の掛かる姫さんだわ。



煌龍の地区内の駅に着く。


さすがに百合以外の女をバイクの後ろに乗せる気にはなれなくて、わざわざ電車を使う俺。


これだから尻に敷かれてるとか言われるんだよな。



俺は、駅から来た方向を見渡す。


昔はここまで来るのにも気を張ってなきゃだったのに。


まだ粗はあれども、平和になったよ……この地区は。


あいつは、言った事を絶対にやり遂げる奴だもんな。



ふっと思わず笑みが溢れる。


そして、ポケットに入っていたタバコを取り出して、口に加える。



まさか、あいつが姫を作るなんて思わなかったけどな。


あいつの心の傷は、俺が一番良く知ってる。


だから、絶対に近くに女を置くことなんてないと思ってた。


それがまさかな。


あんな根暗そうなちんちくりんに惹かれるなんてな。


世の中分かりませんわ。



タバコをくわえたまま、空を見上げる。


すっかり空が高くなった。


秋空だ。


もうすぐ日が落ちてくる。



でも、あいつに心許せる奴が出来たのは、正直嬉しいんだ。


寝てる時や自分に隙が有る時は、絶対に人を寄せ付けなかったあいつが、まさか寝顔を見せられる奴が出来るなんてな。


最初は少し嫉妬したわ。


あいつには絶対言わないけどな。