ルイはその里佳子の問いに答えることなく、私達の方へと足音も立てずに歩き出す。


「ボクは笑里が危険な状況だと判断した場合、このモードを発動するようになっている。消耗は激しいけれどね。プログラムだからそれは止められないんだ」


その言葉を発したルイは、日に日に人間味を帯びていたあの美しい少年ではない。父が造り出した高性能ヒューマノイドの『ルイ』だ。


両肩に私と里佳子を軽々と持ち上げたルイは、膝をぐっと曲げて、誤魔化しようのない、隠し通せない程の機械音を放つと、地面から足を離した。


「笑里、何だよ、ルイって一体何なんだよ?」


空中遊泳を楽しむことを出来ない里佳子は、不安そうに私を見つめる。


言っても良いのだろうか。ルイの秘密を。ルイは、それを良しとするのだろうか。


考えている間もなく私達は崖の上へと到着し、上で様子を全て見て、驚愕に顔を歪ませた嶋山成と楠本燭が、私達を出迎えた。