「大丈夫だ。
 お前と夏目が兄妹かもしれないことは、俺以外、誰も知らない」

 そんなに夏目が好きなら、このまま黙っておけばいい、と言う。

「……そんなことっ」

 知った以上、夏目本人に話さないでおくことなんて出来ない気がする。

「意外と生真面目だな」
と言った智久を睨み、

「貴方は意外といい加減ですね。

 なんでこんなことっ。

 なんで言わないままで……っ」
と智久の胸にすがりつく。

 背中を叩いてくれる智久に、この人、これ以上、慰め方を知らないんだな、と思った。

 意外に不器用な人だ。

 仕事ならなんでも出来るのに、こと対人関係となったら。

「呪いますよ、専務っ。

 早くに教えるか、ずっと黙っててくれればよかったのにっ」

「お前がずっと黙ってればいい」

 無情にも智久は、そんなこと簡単だろうとでもいうように言う。

「無理です。
 無理ですよ……」
と未咲は繰り返した。