「お疲れ!」


紗夜がいないと、寂しいな。


元気出して、帰ろっ!


スマホの画面を指でなぞり、テンション

の上がる曲をセレクトした。


「ふん、ふん、ふんっ♪ 」


突然、腕を掴まれ、はっとして振り向く

と、不機嫌そうな顔をした、琉聖くんが

立っていた。


『琉聖くん?!どうしたの?』


「返事くらいしろ」

『ご、ごめんなさい』


慌ててイヤホンを外した。


「今日は一人か?」

『うん、紗夜が塾に通い始めたから』


「ふん、なに聴いてんだ?」


そう言うと琉聖くんは、右の耳にイヤホ

ンを差し込んだ。


「うるせえ曲だな」

『そ、そう?テンション上がるから』


「オマエ、普段からテンション高いじゃ

ねえか」

『ええッ?!』


琉聖くんは、ニヤリと笑った。


「送ってやろうか?」


そう言うと、背中まで伸びた私の髪を、

丁寧に指で左耳にかけ、イヤホンを差し

込んできた。


『くすぐったい』


「ばあか、可愛い顔すんな」

「ほら、帰るぞ」


『う、うんっ』


イヤホンで繋がってる、私達。少しでも

離れると、どちらかがスポッと抜けてし

まう。抜けないように、肩を抱いて私を

引き寄せる琉聖くん。それでもやっぱり

イヤホンは抜けてしまう。


「あー!腹立つ!」