その時ーー。
花火が打ち上がる音が聞こえてきた。
「あ、花火……」
「始まっちゃったね。会場に戻ろうか?」
「いいよ。ここからでも見えるし。それにアイツらがいるかもしれないじゃん」
「あ、うん……」
私は打ち上がる花火を見ていた。
「俺のセイでゴメン……。せっかく可愛い浴衣着てきたのに……」
「いいって!」
項垂れる成宮を私はそう言って笑った。
彼氏や友達と行ってた時には、まともに花火なんて見たことなかった。
今日、初めて花火をちゃんと見たような気がする。
会場で見る花火とは比べ物にならないくらい小さくしか見えないけど。
でも次から次へと夜空に咲く花火を見て、私は何とも言えない気持ちになっていた。