そんな事情を知らない蒼斗は、微笑みをこちらに向けている。

蒼斗と俺は昔からよく間違えられた。

それくらい見た目は似ているけれど、性格は結構違う。

蒼斗は器用、そして順応。

俺は不器用、ひたすら不器用。

「そっかあ。絢斗あの子と付き合ってんだ。結構可愛いよな」

斜め上を見ながら思い出すように言う蒼斗に、俺は鋭い視線を向けた。

だけど相手は何ともない様子で話を続ける。

「今度家に連れてこいよー。それでさ、途中で入れ替わってみない? 俺が現れた瞬間、めっちゃ笑ってくれそう。面白くね?」

「そんなくだらねぇこと絶対やんない」

面白くないし。

“勘違い”があったのにそんな冗談笑えねえよ。

俺はお茶を飲み干してコップを片付ける。

菜々花の話はこれで終わりにしたい。

「俺、今日午後からバイトだから」

「あっそう。俺は遊びに行くから」

蒼斗はテレビへ顔を向けた。

その後頭部をちら見して、俺はリビングを出て二階の自分の部屋へ行く。

真ん中にある四角いガラステーブルの上に置いてあるスマートフォンを手にとり、クッション椅子の上に座った。