わたしは沙耶に手を振って廊下へ出た。

そして絢斗くんと並んで歩きだす。

嬉しい。

こうしてまた絢斗くんの隣を歩くことができて。

わたしは絢斗くんを見上げて口許を緩めた。

視線に気づいた彼が首をかしげる。

「なんでにやけてんの?」

「ううん、別に」

「菜々花。なに考えてんだよ」

「おしえない」

笑ってそう言うと、絢斗くんがわたしの右手をつかまえた。

「言えよ」

「えー、絢斗くんと一緒にいられることが嬉しいなって思っただけだよ」

はにかんだわたしの手を握る力がゆるんだ。

絢斗くんの頬がほんのり赤くなっている。

やだ、なんだかわたしまで照れてきた。

わたしは絢斗くんから視線をそらし、話もそらした。


「絢斗くん、今度バイト先にラーメン食べに行くからね!」

「え、あ、おう」

「そうだ。遊園地も行こうって話してたよね。絶対行こうね」

「そうだな。行こう」

絢斗くんは落ち着きを取り戻し、わたしの手をぎゅっと握った。


大好きな君へ。

あの日、君に恋をしてよかった。

あの瞬間に君を好きになってよかった。

これからもそばにいて、君の色んな仕草にどきどきしたいなって思う。



【END】