顔を上げられないまま、琉聖くんの背中

を追いかけた。


みんなの前で、表情作れるかな。平常心

を装うって、なんて難しいんだろ。今、

顔を上げたら、みんなに気づかれてしま

いそう。


琉聖くんは、なんでそんなに余裕なの?

そんなに器用に、気持ち切り替えれない

よ。ドキドキがおさまらない。


私は、うつむきながら端っこに座ると、

みんなの話しを聞いている振りをした。


他愛もない話で盛り上がる仲間達。口が

悪いのが玉にきずだけど、とにかく明る

くて元気で、仲がいい。


つい先日、顔にすごいアザを作ってきた

龍斗くん。たぶん喧嘩だろうけど、あま

り話したがらないから、琉聖くんが気に

してたっけ。


今日も葵さんの姿がない。今日で2日目

だ。学校には来てるのかな?心配だな。


あの日から、顔を見せていない葵さん。

元気が出たって言ってたけど、もしも、

一人で思い詰めていたら、どうしよう。


「…おい」

『…はっ!!』


突然、琉聖くんに顎を持ち上げられた。

顔が、ヤバイ。頬が熱くなって、赤くな

っていくのを感じた。


「…何もしねえよ」


勝手に、身体が反応してしまう。恥ずか

しい。


「戻るぞ」

『う、うんっ!』


緊張で、声が裏返ったような気がした。