すると話しはこうだ。
 ここには七人の小人の兄弟が暮らしていて、毎年この時期に行う収穫祭に一年に一度しか取れないという栗カボチャで盛大に祝うという。今年はその大事な栗カボチャを谷に住む魔女に奪われてしまったという。
 そして栗カボチャが奪われた年には異世界から腰に細剣をさした男装の女が現れ、必ず奪い返してくれるという予言が言い伝えられているというのだ。

 確かに私は男装している。剣も腰にかけている。

「だからって私が……」

「なぁに心配すっことねぇっぺ!」

「わしらには救世主の娘ッこがついてるだ!」

「んだんだ」

 明美がいいかけた言葉を遮って、小人のおやじたちは勝手に励まし合っている。

「人の話は聞け!」

 苛立った明美が叫ぶ。

「これを魔女が置いてっただよ」

 なおも明美の言葉は無視され、目の前にピンクのハンカチーフが差し出された。
 なぜかそれを見たことがあるような気がして明美は首をひねる。
 ひとみが持っているものにそっくりだ。
 綺麗に折り畳んであったそれを広げる。
 そこには、

『甘くて美味しいほくほくの栗カボチャはいただいたよ♪
谷に住む魔女、Hより。』

 と、丸字で書いてあった。
 この丸字にも見覚えがある。
 イニシャルH。

 …………ひとみ?

 明美は眉間にシワを寄せた。