そういうことを考えないわけじゃない。でも、だけど、だめ、恥ずかしい。

わたしはもじもじしながらうつむいた。

「大体さ、沙耶はどうなのよ」

「わたし? わたしは残念ながら恋していません。ほしいけどね、好きな人!」

そう言って沙耶はため息を吐いた。

最近、いつもこちらの話ばかりだったから、沙耶の話も聞きたかったけれど。

そういえば、あまり恋の話を聞いたことがないかも。

好きな人がほしいと言った沙耶のことを考えて、わたしは思いついた。

「敦瑠くんは? 気が合いそう」

「はあ? 敦瑠? ないない、絶対ない。敦瑠はただの男友達だもん」

沙耶は呆れた感じで笑っている。

敦瑠くんと沙耶はいつも仲良さそうに話しているから、いいと思ったのに。
少し残念な気分になった。


午前中の授業を終えてお昼休みになり、教室の外へ出ると廊下で絢斗くんを発見した。

後ろ姿に声をかけようかな、と近寄ろうとしたとき。

「梶本くんっ」

一人の女の子が絢斗くんに近づいた。

絢斗くんと同じクラスの佐藤さんだ。

喋ったことはないけれど、お団子ヘアで派手な子だから名字を知っていた。