「………知らない」 小さな声が響く。 「優苗」 ちょっと強めに言うと、 優苗の目から涙が出てきた。 「ちょっと……また泣くのー?」 こうやって診察中に泣き出すことはしょっちゅうある。 そりゃあ泣かせたいわけじゃないけど、 黙っているのも無理だし。 「吸入するよ」 今のうちにしとけば酷くならずに済むことくらい、医者である優苗も分かってる。 それなのにこんなに拒むのは……何故だ?