スタイルいいって……杏樹ちゃんには劣りますから。

お腹はペタンコだけど、それはダンスや筋トレの成果だし。

胸は……少しはあるけど、男性を誘えるほどはないもの。


この状況も……今、誰かに見られたら絶対に“ウソ”だってバレるのに。

高瀬くんはちっとも気にしてない。


「つーか、もういい加減……その敬語やめろ。付き合ってんのにおかしいだろ」

「ム、無理です……初めから敬語で話してきたから……今さら変えられないんです」

「じゃあ……名前」

「え!?」


じゃあ、ってものじゃないよぉ!! 敬語よりハードル上がった!!


「いつまで“高瀬くん”なわけ?」

「うっ……そ、それも無理です」

「なんで」

「恥ずかしいっていうか……なんていうか、やっぱり高瀬くんは高瀬くんのままじゃダメですか?」

「却下」


チラッと見た彼の表情はものすっごく楽しそう。

ムリムリムリ!と顔を横に振るが、高瀬くんは諦めてくれない。


「ほら、茅那」


グイッと顎を掴まれて、無理やり彼の方を向かされる。


「……ぅぅ~……高瀬くんイジワルになりましたね」

「お前がさっさと言わないからだろ」


もうっ! 緊張するんだって!!

蓮、と心の中では呼べるのに……いざ口に出そうとすると唇が震える。


「……れ……」

「ん」





「……蓮くん……」



かなりの時間をかけて、ようやく呼べた。

でも、私の顔は熱くて熱くて、まっ赤だろうということは容易に予想できる。

すると。



「よくできました」



嬉しそうにクシャッとかわいく笑った高瀬くんの顔が近づいてきて。


そのまま――――私は目を閉じた。


外なのに、“友達設定”なのに、まだBBQの途中なのに。

高瀬くんのこの笑顔を見せられたら、どうでもよくなってしまって。

彼に身を任せた。


ライバルだらけの毎日だけど、今日も明日の明後日も。

ずっと『好き』でいてほしいから……私はがんばるの。






「明日の仕事は?」

「22時からラジオです」

「フーン……じゃあ、今夜は返さねえから」


服の下に着ていた水着のヒモや背中のホックが外されたのは、その夜のことだった。



――END――