不良をやめて、しばらく時が過ぎた。


すぐに埋まるはずだった心の穴は、なか

なか埋まらなくて、未だにポッカリと開

いたままだ。ここにピタッとハマるのは

紗夜の癒やしとはまた別の、何かなのか

もしれない。ジグソーパズルのピースが

見つからないみたいにスッキリしない。


今日も、紗夜と一緒の放課後。日直の仕

事がある私を残して、少し先に出た紗夜

が、校門の近くで待ってるはずだ。


校門の先には田園風景が広がり、道路の

グランド側は側溝、その反対側は用水路

になっている。のどかな風景だけど、少

し歩けば繁華街に出るという極端な場所

だ。


30分は待たせたかな?下駄箱に内履き

を放り込んで校門の方へと急ぐと、石の

銘板に寄りかかる、紗夜を見つけた。


『紗…あ…っ』


桜の木の木陰で、銘板に寄りかかり本を

読んでいる紗夜。ストレートの長い髪が

細い束になって、サラサラと風に揺れて

いる。ときどき強い風が吹いて、顔と本

にかかってしまう髪の毛を、指ですくい

肩の方へ流す仕草が、色っぽい。


紗夜…綺麗…


思わず見惚れて、声をかけるのを躊躇し

てしまった。


『あ…っ!』


そして、二度目の躊躇。


紗夜の前に、二人組の男が近寄って来た

からだ。